第177章 誰が彼女の唇に

雫は幼子のようにベッドの縁にへばりつき、千葉清美の手を掴んだ。

しかし千葉清美は何の反応も示さず、依然として泥のように眠り続けている。

福江良平は声を潜め、雫に語りかけた。

「雫、邪魔しちゃいけないよ。彼女はいま、休息が必要なんだ」

雫が顔を上げ、澄み切った瞳で福江良平を見つめる。

「でも、兄さん。さっき兄さんは清美に触れてたじゃない。どうして兄さんはよくて、私はダメなの?」

福江良平は言葉に詰まった。なんと説明すべきか、咄嗟には思いつかない。

「……それは……あー、そう、さっきは千葉清美の髪が顔にかかっていたからだ。鼻を塞いで呼吸の邪魔になるかと思って、退けてあげたんだよ。そ...

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