第185章 男と女

咲花の目が、赤く潤んだ。

「兄さん、決してわざとじゃないの。ただ、怖くて」

「兄さんは別に責めてるわけじゃないんだ。ただ、咲花が悪い人に出くわすのが心配だっただけだよ。ほら、鞄を片付けて。手を洗ってご飯にしよう。あとで祖母(ばあ)ちゃんと母さんから、きっとお説教があるから」

咲花は顔を上げた。

「そうだね! だって今日、私たち二人で幼稚園を抜け出してきちゃったんだもん。祖母ちゃんにも黙って……。ねえ兄さん、今でも福江良平のこと、あんなに嫌いなの?」

「嫌いに決まってるだろ! あんなクズ男、乱暴なだけじゃないか。僕はお断りだね、あんな父親。忘れたのか? 母さんが言ってたじゃないか。あ...

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