第215章 鼓動が聞こえた

福江良平は身なりを整え、腕時計に目を落とした。

すでに夜は更けている。

運転手は呼ばなかった。彼は自ら運転席に乗り込んだ。

ロールスロイスが低いエンジン音と共に始動し、目的のバーへと疾走する。

バーの喧騒の中、マークスは中村颯太と電話で話していた。

「中村颯太、俺と一緒に飲まないか?」

中村颯太は受話器の向こうで、酔っ払いの戯言を無力感と共に聞いていた。

「マークス、今何時だと思ってるんだ? 明日は早朝から仕事だぞ」

「明日は土曜日だろ? なんで仕事なんだよ」

「ボスが言うからだ。ボスが残業するなら、俺も付き合う」

「お前のボスは吸血鬼か何かか? なんでいつも残業させるん...

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