第285章 お宅のこの人

朝倉暁は歌い終えてステージを降りると、すぐさま熱狂的なファンたちに囲まれた。

人だかりの中に立ちながら、彼は懸命に千葉清美のいる方向を見つめようとした。

あの男が彼女の顔を無理やり背けさせ、何かを囁いている。

彼女はこちらを見ることすらできない。

朝倉暁は仕方なく、笑顔でファンたちに挨拶をし、記念撮影に応じた。

その時、白く華奢な手が彼の目の前に差し出された。顔を上げると、信じられないことに千葉清美が立っていた。

彼の顔に、隠しきれない笑みが広がる。

「清美!」

興奮のあまり、その頬は赤く染まっていた。

てっきり、あの男に強引に連れ去られてしまうものだとばかり思っていた。

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