第292章 君の味

千葉清美は身を乗り出し、福江良平を見つめた。その手にはまだグラスが握られている。

福江良平はギュッと目を閉じ、鼻から荒く息を吐き出した。

彼が必死に怒りを押し殺しているのを、清美は察した。マークスの背後から歩み出ると、彼の背中を軽く押す。

「あなたは先に帰って、子供たちを寝かしつけてください」

マークスは目を丸くし、自分の胸を指差して信じられないという顔をした。

「僕が? 帰れって言うのか?」

清美は頷いた。

「ええ、先に帰っていてください」

マークスは福江良平を指差した。

「こいつはどうするんだ? またこいつについて行く気か?」

清美は彼を出口のほうへと押しやった。

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