第341章 同室

福江良平はスーツのズボンのポケットに手を突っ込んだまま、首だけを傾けて彼女を見た。

千葉清美は顎をわずかに上げ、横目で彼を伺う。口元には、あるかないかの微笑が浮かんでいた。

やっぱり。さっき自分は彼女に失礼を働いたのに、清美は怒っていない――そう確信した瞬間、彼の度胸は妙に増した。

「俺、咲花のお父さん……だろ?」

囁くように言いながら、上体を少し屈めて千葉清美の耳元へ寄る。

食事の席で酒は一滴も飲んでいない。それなのに、千葉清美はふわりと酔ったみたいな感覚に襲われた。

だからだろうか。頬が、こんなにも熱い。

……きっと、夕陽がきれいすぎるせい。足元の草が柔らかすぎるせい。心が...

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