第349章 誘惑

福江良平は相手の腕をがしっと掴み、歯を食いしばって言った。「二階へ直行だ」

中村颯太はやれやれといった顔で、彼の身体を支えながら引き返す。唐沢知子はその後ろをついて来て、前を行く中村颯太の背中を見据えたままスマホを取り出し、手早く番号を押した。

二人は宴会場を通らず、脇のエレベーターへ向かった。

エレベーターはすぐ二階に着く。中村颯太は福江良平を支えたまま廊下の両側を見回したが、同じような客室が十数室並ぶばかりで、千葉清美がどの部屋にいるのか見当もつかない。

頭が一気に重くなる。どうやって探せと? 一部屋ずつノックして回る? 現実的じゃない。

そのとき、中村颯太の携帯が鳴った。

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