第351章 容疑者

相手はぎょっとした。「……わかった。すぐ行く」

ほどなくして、コンコン、とノックの音がした。唐沢知子が警戒した声を上げる。

「誰?」

「わたし。野乃よ」

唐沢知子は布団を抱えたまま身をずらして扉を開け、野乃を強引に引き入れると、慌ててドアを閉めた。

野乃は袋を差し出す。

「新しい服と、化粧品」

唐沢知子は迷いなく受け取った。

「野乃、やっぱり気が利くわね」

野乃は口元を押さえてくすくす笑う。

「こういうの、服がダメになるのなんて珍しくないもん。まして従姉のその、繊細なドレスならなおさら」

唐沢知子が今夜着ていたドレスは、F国の名のあるデザイナーが直々に手がけたものだった...

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