第382章 弱み

男が部屋に入ってくるなり、サングラスを外した。そこにいたのは、海外へ逃げるように去ってから何年も姿を消していた唐沢森だった。

彼はアパートの中をぐるりと見回し、眉間にしわを寄せる。

「……どういう暮らししてんだ。福江良平にこんな扱いされて、よく黙ってたな。こんな――住む場所かよ」

以前の唐沢知子の住まいは、ここより何倍もましだった。

唐沢森は知らない。唐沢知子が野乃という奴隷を買うために貯えを削り、さらに野乃を無事に逃がすため、後からも大金を渡していたことを。

両親もまた、福江良平に執着して言うことを聞かず、家同士の縁談に従わない知子に見切りをつけ、とうの昔に仕送りを止めていた。

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