第438章 火事

彼はわかっていた。彼女がここへ来たのは、綾斗に会うためだと。

それでも――今この瞬間、彼女が無意識に寄り添っていることが、たまらなく愛おしかった。この穏やかさを壊したくない。こんなふうに近くにいられたのは、いったいいつぶりだろう。

……もしかして。もう、そこまで俺を拒んでいないのか?

なら、これからはもっと子どもの顔を見に来るべきだな。

ソファの上で、ふいに中村颯太の声がした。

「ボス、俺のこと忘れてません……?」

綾斗はどこからの声なのか不思議そうに、ぱちくりと大きな目を左右に動かす。その愛らしさに、千葉清美は思わず笑ってしまった。

福江良平はスマホを手に取る。

「福江博に...

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