第513章 記憶喪失

高橋北の携帯が鳴った。彼はそれを取り上げ、通話に出る。

「寺内先生、こんにちは」

「高橋さん、こんにちは。福江社長が私のところに書類を一通預けていましてね。あなたにお渡しするよう頼まれています」

高橋北は訝しんだ。

「良平が? 書類? なんで本人が直接寄こさない。わざわざ寺内先生経由なんて」

「彼はもう、STグループのいかなる業務にも関わっていません。私は、受けた頼みを果たすだけです」

「……わかりました」

高橋北は通話を切り、眉間に深い皺を刻んだ。

雲田寧々はキッチンの扉の陰に立ち、耳をぴたりと押し当てていた。

高橋北はすでに別の相手へ電話をかけている。

「颯太、良平は...

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