第516章 また追い出された

雲田寧々の顔色は、さっと血の気が引いていた。唇を強く噛み、胸の奥からせり上がる感情を必死に押し殺す。目を見開いたまま、涙だけは落とすまいと堪えた。

スーツケースのハンドルを握る手に力がこもる。高橋北を見据え、呼吸を整えてから、淡々と言った。

「高橋北。安心して。わたし、あなたと結婚したいなんて一度も思ったことないから。昔やってた仕事は褒められたものじゃないけど……それでも、自分なりに身はきれいにしてきた。男はあなた以外、いない。あなたみたいに、毎晩遊び歩いて、女と寝て、翌朝起きたら隣に誰がいるかも分からないような人とは違う。比べるまでもない。わたしのほうが、ずっときれいだと思う」

寧々...

ログインして続きを読む