第529章 口紅の跡

千葉清美はソファから立ち上がった。だが足元がふらつき、よろめいた拍子にそのままソファへと落ち戻る。

鼻をすん、と鳴らし、ティッシュを何枚か引き抜いて涙を拭った。さらにウェットティッシュで肌についた痕をぬぐう。

けれど――彼が残した紫がかった赤い痕は、どうやっても消えてくれなかった。

清美は小さく息を吐き、黒いドレスに着替えると、テーブルの前に座って化粧をやり直した。

ファンデーションとチークが青白い顔色を覆い隠す。長いまつげが、赤くなった目元をほとんど隠してくれた。濃い口紅は、福江良平に噛まれて腫れた唇を誤魔化すための鎧だ。

鏡の前で髪を整え、深く息を吸う。何事もなかったふりをして...

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