第53章 奥様は行方不明になった

長野久美子は福江美子の腕を支えながら外に向かった。

「お婆様、お送りします。小野君がもう外で待っていますよ」

福江美子は長野久美子の手を振り払った。

「結構だ。私には運転手がいるから。みんな羽が硬くなって、もう私なんか必要ないのね。こんなに嫌われているなら、もうあなたたちの邪魔はしないよ!」

そう言い捨てると、福江美子は怒りに任せて出て行った。

長野久美子は彼女が遠ざかるのを見届けてから、ようやくドアを閉めた。

千葉清美は部屋に戻ると、汚れた服を着替え、洗面所に入った。蛇口をひねり、冷たい水で腫れて痛む頬を軽く叩いた。

鏡を覗き込むと、左頬は明らかに赤く腫れ上が...

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