第55章 初めてのセックスの感覚

中田美枝はそのとき千葉清美の腫れあがった頬に気がついた。

彼女は軽く千葉清美の顔に触れてみると、眠りの中の千葉清美は痛みに「っ」と小さく声を漏らし、微かに呟いた。

「お母さん、痛い…」

中田美枝の目から涙がこぼれ落ちた。一体誰が清美をこんな目に遭わせたのか分からない。もしそれが一度も会ったことのない旦那だとしたら、娘がそんな暴力的な男と離婚することを全面的に支持するつもりだった。

彼女は知らなかった。娘が福江家でこんなにも苦しんでいたことを。それなのに彼女の前では常に笑顔を作り、一言も不満を漏らさず、きっと心配させまいとしていたのだろう。

世間の人々は福江家の莫大な財力...

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