第104章 自己紹介を忘れた

(牧野結菜の視点)

木村凛の言葉が落ちた瞬間、平山里穂子はもう堪えきれなかった。

彼女は私の手をぐっと押さえ、そのまま立ち上がる。

その一瞬、怒らせた猫みたいに全身の毛が逆立った気がした。

「納得?」

平山里穂子の視線が、刃みたいに木村凛へ突き刺さる。

「ねえ、木村さん。あなた、その格好……どこのセール品? それとも露店で掘り出してきたの?」

口元に薄い嘲笑を浮かべ、彼女は木村凛のくたびれたスーツを上から下へと舐めるように見た。

しわだらけのタイトスカート。擦り減った黒いハイヒール。最後に、厚塗りのファンデーションが浮いた顔。

「それにさ、顔色ひどいよ。ファンデ、ヨレて地図...

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