第107章 身ひとつで出ていく

(牧野結菜の視点)

「圧をかけるのはあの人の役目。訴えるのは私の役目。……岩本先生、お願いします。できるだけ早く手配して」

受話口の向こうで、岩本源が二秒ほど沈黙した。

それから、くっと喉の奥で笑う。

「面白い。牧野さん、想像してたよりずっと骨があるんだな。安心しろ、俺に任せとけ」

通話を切ると、平山里穂子がすぐさま身を乗り出してきた。顔には心配と怒りがべったり貼りついている。

「結菜、ビビるなよ! 福山家が何だっての! 圧かけてくるなら、うちの親父に言って取引全部止めさせる! 裁判? 望むところだよ!」

その勢いが嬉しくて、胸の奥が少しだけ温かくなる。私は首を横に振った。

...

ログインして続きを読む