第110章 負けを認められない

(福山真司の視点)

ホテルの正面玄関を飛び出した瞬間、目の奥が焼けるみたいに熱かった。

真っ赤になった目で周囲を睨みつけ、息も整わないまま視線を走らせる。

駐車場から黒いマイバッハが飛び出してきて、俺の横で急ブレーキをかけて止まった。ドアが開く。

だが俺は車なんて見ない。ホテル前に停まっているピンクのポルシェだけを探した。

――いない。

背筋がぞくりと冷え、俺は勢いよく振り返った。人の波の中をかき分けるように目で追って、ようやく見つける。

平山里穂子。

弁当箱を提げて、少し離れた場所に立っていた。

「結菜は?」

大股で詰め寄り、反射的に腕を掴もうとする。

だが里穂子は俺...

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