第112章 味は悪くない

(牧野結菜の視点)

「そこのお嬢さん。対応するの、君じゃなかったよね?」

平山徹也はコーヒーカップを置き、身体をわずかに乗り出してきた。視線がまっすぐ私に刺さる。口調には、からかうような余裕が混じっている。

「それとも――このコーヒー、俺のためにわざわざ淹れてくれたの?」

その一言で、会議室のあちこちからひそひそと小さな声が立った。

頬がかっと熱くなる。胸の奥で、むっとした火が灯った。

この人、わざと。しかも大勢の前で。

反論しようと口を開きかけた、そのとき。

「平山社長、誤解です」

柔らかな声が割って入った。杉浦晴陽が席を立ち、私の隣へ歩み寄る。

「結菜は入社してまだ日...

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