第117章 彼はすべてを知った

(牧野結菜の視点)

またスマホの画面が点いた。平山里穂子のアイコンが跳ねる。文字じゃない。長い長いボイスメッセージの束。

少し迷ってから、私は一通目を再生した。

『結菜! いま、兄のオフィス出てきたとこ! あいつ、どんだけムカつくと思う!?』

耳元で爆発するみたいな声。怒りが抑えきれていない。

『私が乗り込んだときさ、あいつ椅子にだらーっともたれて、足組んでんの。で、「なんで結菜にあんなことしたの」って聞いたら、なんて言ったと思う? ――「ちょっと面白かったから、からかってみただけ」だって!』

指が画面の上で止まったまま、動かない。

からかっただけ。

つまり彼にとって私は、暇...

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