第119章 彼は傷痕を見た

(牧野結菜の視点)

十分ほどして、パトカーが会社の前に停まった。

私は後部座席に座り、手首に残った爪痕がじんわり疼くのを堪えていた。隣では平山里穂子がまだ怒鳴り散らしていて、向かいの席には杉浦晴陽。彼は時おり、様子を確かめるみたいに私へ視線を寄越す。黒いスーツの男たちは別の車に乗せられていた。

警察署に着くなり、里穂子は入口で爆発した。男たちを指さし、警官に向かって声を張り上げる。

「警察官! 見ましたよね? 白昼堂々、会社の前で私の友だちに手を出したんですよ! 明らかに傷害です! きっちり罰してください!」

声が広いホールに反響し、跳ね返ってくる。

調書を取る担当は眼鏡をかけた...

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