第132章 もう隠れたくない

(牧野結菜の視点)

マンションのキッチンで、私は平山里穂子と一緒に食器を片づけていた。

けれど彼女はずっと上の空だ。皿を洗っているはずなのに、三回に一回は手が止まる。じゃあじゃあと水が流れ続けるなか、彼女の手元の皿は蛇口の下で二分近くすすがれたまま、ぴくりとも動かなかった。

「……カラン——」

乾いた音。

スプーンを取り落としたらしく、床に当たって跳ね、ぱしゃっと小さく水が散った。

「どうしたの?」

私はすぐに振り向き、蛇口をきゅっと閉めると、彼女の手を取って確かめた。

「熱かった? 切った?」

指先は無事だった。赤くもなっていないし、傷もない。

「平気」

里穂子は小さ...

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