第138章 一生ここに残るべきだ

【福山真司の視点】

書斎は静まり返っていた。

壁時計の針が、カチ、カチ、と刻むたびに――まるで告げ口みたいに胸を刺す。

彼女はもう、俺を要らないのだと。

「俺から離れるために……五千万すら要らない、か」

ふっと笑いが漏れた。

自分の喉から出た音なのに、どこか他人の声みたいで気味が悪い。

「だが、俺と結婚した以上――あいつは一生、福山の人間だ。死んでも墓碑には俺の名が刻まれるべきだろ」

窓辺へ歩き、夜の闇を睨みつける。

冷めたんだと思っていた。心が凍ったんだと。

だが、違う。俺はようやく腑に落ちた。

あいつは金を受け取った。五千万。協議書にサインした。

返したかどうかな...

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