第154章 クズ男

(牧野結菜の視点)

電話の向こうで、岩本源が黙り込んだ。

その沈黙は、これまでのどれよりも長い。

「……俺が徹也さんに頼んだんじゃない」

ようやく出てきた声は、さっきより一段低い。勢いが削がれていた。

「岩本先生」

私は遮った。強い口調じゃない。けれど、続きを飲み込ませるには十分だった。

「さっき言ったでしょう。平山徹也って人は、自尊心が高くて、面倒くさくて、絶対に折れない。そんな人が、何の関係もない相手のために、平山グループの人脈を総動員して、丸一日かけて離婚の証拠集めをすると思う?」

岩本源は、また黙った。

「しないよね」

私が答えを置く。

「誰かに頼まれない限りは...

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