第156章 誰にも借りはない

(牧野結菜の視点)

テーブルの上に置かれた白い小箱を、私は二秒だけ見つめてから視線を引いた。

「里穂子、考えすぎよ」自分でも驚くほど落ち着いた声が出る。「お兄さんが岩本源さんと食事したのは、裁判に勝ったお祝い。友だち同士で乾杯しただけで、私とは関係ないわ。弁護士費用の件も、岩本さんの勘違いかもしれないし……お兄さんが『妹の友だちのために動いてくれた』ってことで、顔を立てただけかもしれない。そんなところよ」

電話の向こうで、平山里穂子が「ふん」と鼻を鳴らした。

「結菜、自分でそれ信じてる?」

「信じてる」

「……」

「里穂子。私は離婚したばかりで、今はそれ以外のことを考える余裕が...

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