第159章 誰が誰を守るのか

(牧野結菜の視点)

店員はトレーを抱えたまま、三メートルほど先で立ち尽くしていた。足が床に縫い付けられたみたいに動かない。隣の席ではもうひそひそ声が広がり、誰かがそっとスマホを構えた。

杉浦晴陽はナイフとフォークを置き、私の肩越しに視線を滑らせて福山真司を捉えた。立ち上がりもしない。声を荒げもしない。ただ目の前のレモネードを持ち上げ、もう一口だけ含む。

それから笑った。穏やかで、余裕があって――ほんの少し、本気で楽しそうな笑み。

「結菜」

グラスを置く音は小さいのに、声は不思議なくらい通った。三メートル先の人間にも、きっちり届く音量で。

「さっきケーキの話してたけど、抹茶が苦手な...

ログインして続きを読む