第163章 お礼

(牧野結菜の視点)

鼎盛グループのオフィス。

私はパソコンに向かい、図面の修正をしていた。画面右下に、ぽん、と通知が浮かぶ。岩本源からだ。

『牧野さん、いい知らせです。福山真司の控訴、取り下げになりました』

キーボードの上で指が止まった。二秒。

驚きじゃない。言葉にできない感覚――張り詰めていた弦が、ふっと緩められたみたいな。痛くはないのに、身体の芯がぐらりと揺れた。

『……取り下げ?』

『はい。真司本人じゃありません。福山の爺さんが、直々に署名しました。取り下げ通知は今日の午前中に裁判所へ届きます。手続きが終われば、あなたと福山真司の婚姻関係は法的に完全終了。二審も逆転もなし...

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