第169章 表裏がある

(福山真司の視点)

俺は、あいつの口元に浮かんだ薄い嘲りを見つめたまま、何も言わずに背を向けた。オフィスへ入る。背後でドアが乱暴に閉まる。

バン。

廊下が静まり返った。ドアの内側に立ったまま、胸がまだ上下している。手の甲の傷がまた裂けて、ガーゼの隙間から血が滲んでいた。ちらりと見下ろしただけで放っておく。

デスクの向こうに腰を下ろし、机上の書類に視線を落とす。文字が並んでいるのに、ひとつも頭に入ってこない。

コンコン。

ノックが二回。岩瀬がぬるま湯を持って入ってきて、机の端にそっと置いた。

「福山社長、確認しました。福山圭が最上階へ上がった件ですが、秘書室の承認ルートを通ってい...

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