第17章 振り返らない

(牧野結菜の視点)

――数分前――

「動くな! バッグをよこせ!」

男が二人。マスクに帽子。

心臓がどくりと跳ねた。けれど、頭で考えるより先に身体が動いていた。私は膝を振り上げ、背後の男の急所に思いきり叩き込む。男がぐっと息を詰まらせた拍子に、手が緩んだ。その隙に身をよじって抜け出し、バッグを抱え込む。――あの中には、私の身分証もカードも全部入っている。奪われるわけにはいかなかった。

「このアマ……よくも逆らいやがって!」

もう一人の男がポケットからナイフを抜き、私めがけて薙いできた。とっさに身をひねる。刃は触れなかった。けれど、その反動で大きく体勢を崩し、そのまま地面へ激しく叩...

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