第190章 何かおかしい

【牧野結菜の視点】

鼎盛グループ。午後六時。荷物をまとめ、いつもどおりタイムカードを切って退社した。

エレベーターの扉が開いた瞬間、入口で待っていた杉浦晴陽先輩と目が合う。

「先輩……?」

思わず声が出た。

「会議が終わったところ。よかったら一緒に帰らない?」

偶然を装った自然な口ぶり。けれど先輩の手には資料の束がある。……偶然じゃない。私を待っていたのだ。

エレベーターの中は、私たち二人きり。

「結菜」

扉の金属に映る私の横顔を見つめながら、先輩が静かに言う。

「送るよ。マンションの前まで。上がらない」

私は小さく息を吐き、向き直って先輩を見た。

「先輩、ありがとう...

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