第201章 綻び

【牧野結菜の視点】

退勤して会社を出ると、空はもうすっかり暗かった。街灯はまだ点いていない。代わりに、通り沿いの店の看板が赤や青や緑の光を滲ませ、歩道にまだらな色の影を落としている。

私は駅へ向かって歩きながら、頭の中ではずっと、あのネックレスのことを反芻していた。平山里穂子は「1億でネックレスを買うなんて金持ちの世界はわからない」と言った。私にもわからない。けれど、ひとつだけわかる。

あのネックレスは、私のものだ。

少し歩いたところで、背中がむずむずした。皮膚に何かが貼りついているみたいな、掻いても届かない痒さ。振り返っても、何も見えない。

私は歩幅を落とし、スマホを見ているふり...

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