第205章 最後の一本の髪の毛

(牧野結菜の視点)

翌朝。

一枚、図面を描き終えたところで、部長の青山明が足早にオフィスへ入ってきた。顔には隠しきれない興奮が浮かんでいる。

「結菜! 大ニュースだ!」

声まで震えている。

「幸村グループだ。ウォール街の、あの幸村グループが――帝京市に物流の倉庫と、いくつかのハイエンド案件を立ち上げる。向こうから協業の打診が来た。しかも……お前に会いたいって、名指しだ!」

私はペンを置き、眉を寄せた。

幸村グループ。名前くらいは知っている。正真正銘の名門、別格の存在だ。

けれど私はただのデザイナーだ。どうして、そんな相手が私に?

「青山さん、何かの間違いじゃ……私、幸村グル...

ログインして続きを読む