第207章 闇の中の手

(牧野結菜の視点)

意識は、溺れた人間みたいに――浮かんでは沈み、沈んではまた浮かぶ。

いちばん最初に私を叩き起こしたのは、腰の奥の灼けつくような感覚だった。痛い、じゃない。焼ける。真っ赤に熱した鉄を肌に押し当てられて、そこから火が爆ぜ、背骨を伝って上へ駆け上がってくるみたいに。

身じろぎした瞬間、手が背中側で縛られているのに気づく。ざらついた縄が手首に食い込み、皮膚が擦れてひりついた。足も縛られている。口にはガムテープ。身体は冷たい鉄板の床に丸められ、車体の揺れに合わせて、壁へ何度も打ちつけられていた。

ワンボックス。車内には煙草の臭い、汗の臭い、それから鉄錆の生臭さがこもっている...

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