第211章 彼女は乗り越えた

(福山真司の視点)

救急処置室の扉が押し開けられた、その瞬間。

廊下にいた全員が、示し合わせたみたいに息を止めた。

主治医がマスクを外す。額には汗がびっしょりで、声は水の底から引き上げられたみたいに掠れていた。

「ひとまず、峠は越えました。ただし、48時間は慎重に経過を見なければなりませんす」

背中を冷たい壁に預けたまま、俺の身体がずるりと沈む。

峠は越えた――その言葉が、崖っぷちから俺を引き戻した。

完全に安全じゃない。

それでも――生きている。

幸村母が膝から崩れそうになり、幸村父が咄嗟に支えた。腕の血管が浮き上がる。まるで、今にも崩れ落ちそうな家を一本の腕で支えている...

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