第231章 ルームキー

【牧野結菜の視点】

看護師が出ていくと、病室はしんと静まり返った。私は枕に背を預け、天井を見つめる。頭の中では、さっき彼女が伝えてくれた言葉がまだ回っていた。

――「目が覚めるたび、枕が濡れてるんです」

二十五年。九千を超える夜と朝。彼女は九千回以上夢を見て、そのたび私の名を呼んだのだろう。目を覚ますたび、私はいない。ずっと、いない。

ドアが開いた。

平山徹也が入ってくる。灰色のカジュアルスーツに着替えていて、ネクタイはなし。襟元のボタンを二つ外し、紙袋を提げていた。

その後ろにもう一人――岩本源。青いシャツの袖を肘までまくり、片手にコーヒー。口元には、相変わらずの「いつもの笑い...

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