第237章 終身

(牧野結菜の視点)

平山里穂子の気持ちがまだ完全には落ち着かないうちに、病室のドアがコンコン、と控えめに二度叩かれた。入ってきたのは幸村千弘だ。

朝より顔色は少し戻っている。けれど目の下の青みはまだ残っていた。清潔な白いシャツに着替え、袖は肘までまくってある。右手の指の関節には擦り傷があって、絆創膏が貼られていた。

「兄さん」

私が呼ぶと、彼はベッド脇の椅子に腰を下ろした。目の光が、さっきまでよりずっと柔らかい。

「元気そうだな」

「うん。今日はお粥、二杯食べた」

彼は小さく頷く。

「それならいい」

私は彼の指の絆創膏を見つめたまま、数秒黙った。

「ねえ、兄さん。村山愛未...

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