第26章 おもちゃ

(牧野結菜の視点)

私は、いいとも悪いとも言わなかった。

ただ手を伸ばし、私の手首を掴んでいる彼の指を、一本ずつ、丁寧にこじ開けていく。

「福山社長、ほかにご用がないようでしたら、失礼します」

机の上の保温弁当を手に取った。

「……まだ飯、食ってないだろ」

思わず足が止まる。振り返らない。

あまりにも不意打ちだった。誕生日すら覚えていない人間が、ある日突然「ちゃんと飯食ってるか?」と聞いてくるみたいな——感動じゃなくて、どう反応すればいいのか分からないだけのやつ。

三年だ。

彼が私に「食べたか」と尋ねたのは、これが初めてだった。

でも、もう要らない。

「結構です」

ド...

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