第31章 ローズ・クラウン

(福山真司の視点)

レストランの照明は落とされていた。ステーキは悪くない。ワインも上等だ。なのに、頭の中を占めているのは、別荘を出る前に見た牧野結菜の青ざめた顔ばかりだった。

あいつが何を言っていたのか、思い出せない。

自分がどう怒鳴って、どうドアを叩きつけて出てきたのかも、もう曖昧だ。

ただ、唇だけは覚えている。

きゅっと固く結ばれていて、血の気なんて欠片もなかった。

たかがネックレス一本で、そこまでなるか?

また、胸の奥から苛立ちがむくりと頭をもたげる。湿った綿でも押し込まれたみたいに重くて、吐き出せもしないし、飲み込むこともできない。

「真司兄、どうしたの? まださっき...

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