第49章 どこにもない

(福山真司の視点)

写真の中の彼女は、スポットライトの下に立っていた。

瞳には自信と誇りだけが宿り、まるで世界のほうが彼女に道を譲るべきだと言わんばかりだった。

マウスを握った手が、空中で固まる。

画面を見つめたまま、頭の中が真っ白になった。

――昔は、こんな顔をしていたのか。

そう思った瞬間、すぐに打ち消す。

だから何だ。所詮は古い写真だ。結婚した以上、彼女は福山夫人だ。福山夫人らしくあるべきだろう。

苛立ちまぎれにページを閉じた。

スマホが鳴る。ビデオ会議のリマインドだ。

深く息を吸い、あの笑顔を頭の隅へ追いやる。ネクタイを整え、会議室に入った。

数十億ドル規模の案...

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