第65章 あの少年は誰だ

(福山真司の視点)

彼女の瞳に、ひと筋の狂気が走った――それが、彼女の最後の切り札だと直感した。

私に思い知らせたいのだ。牧野結菜は、俺なんか愛していない。心の中には別の誰かがいるのだと。

「返して!」

「それ、返してよ!」

その瞬間、理性の糸がぷつりと切れた。

俺は獣みたいに飛びかかった――破り捨てるためじゃない。奪い返すためだ。

彼女を乱暴に突き飛ばし、冷たい床に膝をつく。散らばった紙を一枚、また一枚と拾い集める。

結菜の七年を乗せた紙を、胸の奥へ押し込むみたいに抱きしめた。

壊せなかった。

たとえそこに書かれているのが別の男でも、たとえ一文字ごとに刃物で抉られるみた...

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