第66章 彼を空気扱いした

(牧野結菜の視点)

朝の光がカーテンの隙間から差し込む。新しく借りたマンションで目を覚ました私は、顔を洗い、身支度を整え、メイクをする。身体にきれいに沿うオフィス用のスーツに、控えめな化粧。鏡の中の私は、余計なものが削ぎ落とされたみたいにすっきりして見えた。

新しい生活。全部、いい方向へ向かっている。

バッグを手に取り、鍵をかけて、いつもどおり出勤するために外へ出た。

けれど、マンションのエントランスを抜けて、タクシーを拾おうと歩道へ向かった、そのとき――

路肩に、黒のベントレーが停まっていた。

あのナンバー。目を閉じても言える。

ドアが開き、運転席から福山真司が降りてくる。

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