第70章 彼女に感謝しなきゃならない

(福山真司の視点)

俺は歩み寄り、引き出しを開けた。

そこに、静かに横たわっていたのは――俺たちの結婚証明書だった。

震える指先でそれを取り出し、そっと開く。

写真の中の俺は、きっちりとしたスーツに身を包みながら、冷淡さと苛立ちを隠そうともしていない。口元は固く結ばれ、作り笑いひとつない。

隣にいる牧野結菜は、シンプルな白いシャツに薄化粧。けれど、それでも眉間に滲む疲れと、目の奥の悲しみは隠しきれていなかった。

彼女は必死にカメラへ向かって、泣き顔みたいな笑みを引きつらせている。

あの頃の俺は、それを「白々しい」「目障りだ」としか思わなかった。

今になって、ようやく分かる。

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