第84章 彼は聞き入れた

(牧野結菜の視点)

人事部から戻ったあと、これで一件落着――そう思っていた。

デスクに座り、パソコンの画面を見つめる。指はキーボードの上に置いたままなのに、文字がひとつも打てない。さっき人事部で、あれだけ大勢の前で言い切った。緊張していなかったはずがない。けれど、言わなきゃいけなかった。

自分で立たなければ、誰が信じてくれるの。私がコネで上に行ったんじゃないって。

深く息を吸い、余計な考えを押し込める。意識を設計図へ引き戻した。

キーボードを叩きかけたところで、青山明が来た。遠くから呼ぶのではなく、私の机の横まで来て、指先でトントンと軽く机を叩く。

「結菜、ちょっと私のオフィスま...

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