第87章 彼女をもう一度私のそばへ縛り戻す

(福山真司の視点)

福山グループ、社長室。

岩瀬から報告を受けた瞬間、俺の耳に刺さったのはそこだった。

牧野結菜が人前で「既婚」であること、そして「離婚を熟慮中」だと宣言した――その事実よりも。

彼女は最後まで、俺の名前を出さなかった。

夫が誰かも言わなかった。俺が夫だと、一言も。

……ふざけるな。

椅子の背に掛けていたスーツの上着をひっ掴み、俺はそのままドアへ向かった。

「行くぞ。直接聞いてやる。俺、福山真司が――そんなに恥ずかしいのか?」

三年だ。

三年も夫婦でいて、それでもなお、俺との婚姻は“口にできないもの”なのか。

「俺は……いったい何なんだよ!」

俺の剣幕...

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