第98章 狂犬

(福山真司の視点)

一分。二分。三分。

スマホの画面が暗くなって、また点く。返事はない。

俺はもう一通送った。

「下にいる」

今度は、返ってくるのが早かった。

「誰? 頭おかしいんじゃない? 消えろ」

その「消えろ」を見た瞬間、こめかみの血管がどくんと脈打った。生まれてこの方、こんな言い方をされたことはない。父にも、母にも、祖父にも。なのに今、五、六歳は年下の女が、たった一言で俺を壁際に追い詰めた。

殴られたみたいなのに、殴り返す腕すら上がらない。そんな感覚。

怒りを噛み殺して、スマホを助手席に叩きつけた。跳ねた端末がシートの隙間に落ちる。胸の奥が石で塞がれたみたいに重く、...

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