第275章

水原雪乃は、今になってようやく理解した。甥の水原拓真が、どれほど黒川綾という存在を重く見ているかを。そうでなければ、あれほど自分からの頼みを拒み続け、あまつさえ綾本人にその話さえしていなかったなどということがあるはずがない。

さきほどの綾との会話で判明したことだが、雪乃のことを手伝わせようという話を、拓真は彼女に一切伝えていなかったのだ。

どうりで、いつまで経っても音沙汰がないわけだ。あの子はいったい何を考えているのやら。

惚れた女なら、手元に置いておけばいいものを。感情という鎖ほど、強固な繋がりはないというのに。

長らく会社の経営に携わっていながら、そんな単純な道理も分からないのだ...

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