第280章

そう考えた黒川綾は、自力で帰宅する手段を講じることにした。

だが、例の殺し屋はとうに黒川綾に狙いを定めていたのだ。彼女の車に不調が生じたのも、すべてはこの男の手によるものだった。

黒川綾がタクシーを拾おうとしたその瞬間、男はすかさず車を寄せてきた。黒川綾はまったく疑うことなく、無防備にもその車に乗り込み、行き先を告げてしまう。

運転手は顔を隠すように厳重な装備をしていたが、黒川綾は怪しむどころか、防犯意識の高い運転手なのだろうと好意的に解釈してしまった。この街の治安を過信し、まさか自分が事件に巻き込まれるなどとは露ほども思わず、彼女は安心してシートに身を委ねていた。

バックミラー越し...

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