第292章

「あんたの言っていることが本当なら、彼女のところへ案内してやってもいいぞ」

水原拓真はその言葉を耳にするや、驚きと喜びを表情に滲ませた。まさか本当に黒川綾を見つけ出せるとは思っていなかったのだ。彼は即座に頷き、確信に満ちた口調で応じた。

「間違いない。その女性こそが私の妻だ。名は黒川綾という。頼む、すぐにそこへ案内してくれ」

水原拓真が黒川綾の名を口にしたことで、若者はようやく警戒を解き、先導するように歩き出した。だが、本気で付いていこうとする水原拓真を、秘書が慌てて腕を伸ばし制止する。

「社長、ここは慎重になるべきです。周囲の人間は我々に無関心を装っているのに、目の前の男だけが奥様...

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