第300章

「奥さん、家政婦としてうちで働いてくれませんか。二人とも安心してください、決して悪いようにはしませんから」

「仕事の内容もシンプルですし、きっとこなせると思いますよ」

 黒川綾は知っていた。この夫婦には特筆すべき才覚もなければ、手に職があるわけでもないことを。

 だからこそ、こうして仕事をあてがうのが、最も適切な処置なのだ。

 中年夫婦は先ほどまで、黒川綾への恩義にどう報いるべきか分からず、戦々恐々としていた。

 だが今の言葉を聞き、慌てて頷くと、彼女の提案に便乗した。

「お嬢さんがそう言って私たちを置いてくださるなら、精一杯、自分たちの務めを果たさせていただきます」

 確かに...

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