第302章

一般人が彼に会うことなど、天に昇るよりも難しい。

吉野文詠は艶然とした仕草で水原拓真の前に腰を下ろした。その流し目には、あからさまな媚態が滲んでいる。

「まさかこんな形でお会いできるなんて。水原社長にはずっと連絡を入れていたのですよ。今後の業務提携について、じっくり話し合いたくて」

「でも、水原社長ったらあまりに秘密主義で、お返事一つくださらないんだもの。てっきり、わが社との提携なんて眼中にないのかと思いましたわ」

その言葉を聞き、水原拓真は違和感を覚えた。吉野文詠という女の身分、何かがおかしい。

だが、彼が事前に行った身辺調査では、何一つ異常は見当たらなかったはずだ。

水原拓真...

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